なぜレッスンをしないのですか?
Cake Decorating Magazineの撮影時に大好評だったジョウロ型ケーキ。
中のピオニーの花型が付録だったのだと思います。
この撮影日はお店もウエディングの注文で忙しくて
撮影後にお店に戻って夜中まで仕事をしたのを覚えています。
きっと娘が林間学校か何かでいなかったんでしょうね。
出版社の方がものすごく気遣ってくれて
きっと見るからに疲れていたのでしょう(笑)
今では良い思い出です。
毎週の撮影は大変でしたが
ウエディングケーキに偏りがちなシュガーケーキスタジオでの修行で
幅広く作る機会に恵まれて
格段に作品の幅が広がりました。
それなのに
なぜレッスンを開催しないのかと
よく質問を受けることがありました。
ブログまで読んで下さる方に
なぜ帰国から今までシュガーケーキのレッスンを開催できなかったか
少しお話したいと思います。
カレッジで学び
Zoeのスタジオで修行し
この雑誌でも紹介した
すべての技術を
日本の風土に合うように改良して
新たなデザインで販売から始め
興味をお持ち下さる方が増えたら
レッスンを通して日本に食べるシュガーケーキの存在を広めたい。
そんな熱意を持って帰国した私でしたが
実は帰国後は
親子揃って日本に馴染めず
苦しい期間が続きました。
まずは娘。
何事もなくても思い悩むことの多い思春期。
6年以上をイギリスで過ごした娘が
環境の違いに馴染めず悩むのはむしろ自然なことだと思います。
帰国2年後には娘は日本の学校教育を諦め
インターナショナルスクールに転校しました。
私は朝晩合わせて3時間の距離を車で送迎し
始めはいつでも帰れるようにと学校の近くで待機していました。
そのため
シュガーケーキの仕事は
友人の紹介で細々と販売するのみとなっていました。
いつか必ずトンネルを抜ける時が来ると信じてはいましたが
我が家にとっては最も苦しい時期でした。
そして私も。
帰国後は私に好意ではない気持ちを持って近づいてくる人たちもいて
どんどん恐怖心や警戒心を持つようになっていきました。
もちろんそんな他意無くお声かけ下さる方の方がずっと多いのですが
実際に利用されたり
そういう目的なのかなと疑ってしまうような
突然の連絡が見知らぬ方から届くこともよくありました。
帰国後、日本で師事している先生の技術の高さと幅広さに触れて
自分に教えられるほどの技術があるだろうかと思う気持ちと共に
また利用されてしまうのではという恐怖心や警戒心もあり
レッスン開催には年々臆病になっていきました。
更には
長期の海外生活を経験して帰国したことが気に入らないという理由で
私たち家族を陥れたいという人が存在するということも知りました。
表面的な経歴が気に入らないという理由から
子供にさえ嫌がらせをする大人がいるのだという驚き。
今まで自分たちは
心の温かい人たちの中で生活できていたのだな・・・と
改めて感謝の気持ちが持てたことは幸いでしたが、
正直なところ、人間不信のような状態に陥ったこともありました。
今も、どこまで人を信用して良いのかわかりません。
先日ブログに書いたように
私は35歳まで社会人経験もなく
簡単に人を信用してしまい
後でそんなことされていたんだ・・・と知って
落ち込むことも一度や二度ではありません。
そんな中でも
見てくれている人は必ず存在するし
分かってくれる人も必ず存在するのだということも
そんなことが起こるたびに知ることができました。
娘の朝の送迎後に待機が不要になってからは
お迎えまでの数時間を
料理教室の製菓講師
整理収納アドバイザーなど
短時間のお仕事が可能で
今まで身につけてきた
シュガーケーキ以外のスキルを活かす仕事に挑戦してきました。
それはそれで素晴らしい経験でしたし、技術も向上しました。
でもコロナ禍の時間の中で改めて考えてたどり着いたのは
やはりクオリティーの高い食べるシュガーケーキに出会った時のあの興奮や情熱は
私にとって最大の感動だったということです。
また
コロナ禍によって
いつでもできると思っていたことが
そうでは無いのだと初めて知りました。
いつか・・・と思っていたことが
もしかしたら挑戦も出来ずに
一生を終えてしまうことが起こりうるのだと。
私は
やり残したことはないと言い切って人生を終えたいと思い
外でのお仕事をすべて退職しました。
そして
世間知らずでビジネス感覚のない私は
教室経営専門のコンサルティングの先生や
パソコンとWEBマーケティングのプロの方に
協力を依頼することにしました。
人に傷つき
人を怖れてきた帰国後の数年でしたが
人を頼り
人に助けられ
今は新たな挑戦をしています。
月並みですが
人間は一人では生きられないものなのだと
つくづく感じます。
私のケーキを好きでいてくれる人
私の人間性を好きでいてくれる人だけで構わない。
細々とシュガーケーキを作り続けて
食べられるアートの可愛さと美味しさを
そんな方々と共有できれば
それで十分だなと、今は感じています。
そして
レッスン開催によって
日本に食べるシュガーケーキが普及することに
少しでも貢献できたら
幸せなことだと思います。